NPO法人ARDA
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やまとアートシャベル1期生研修レポート(9~11回目)/シャベラーさんに聞きました!①

対話で美術鑑賞 2012年11月14日

■9回目 8月28日

いよいよ始まる小学校での実践に向け<やまとアート・シャベル>の活動もより具体的になっていきます。
今回は、学校での対話による美術鑑賞授業を行った際に、担当の先生方に回答していただくアンケートの内容を検討します。
項目チェック式、記述式など、既存のアンケート用紙をサンプルとして、どういった形式がよいか?何故そのような形式が良いのか、グループで話し合いました。印象的だったことを自由に書いてもらうのがよいのか、あるいは子どもの様子ついて、先生自身の感想をきいたほうがよいのか…集計方法、その後の活用法など様々な角度から検討し、具体的な質問項目までを考えます。今後は、ここでのグループワークの結果をもとに、手を挙げてくれた4人のアンケート作成委員が最終的なアンケート用紙の完成までをリードしてくれることになりました。

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後半はVTSコーチング。
まだみんなの前に立つファシリテーターを一度も経験していないシャベラーもいるので、これからはいかに多くの経験を積めるか、時間との闘いです。せっかくのコーチングをやりっ放しにしないように、VTS演習の記録用紙を作り、録音もしていますが、講師の三ツ木さんによると、自分のファシリテートしたVTSの書き起こしをしてみると、驚くほど多くの発見があり、とても良い勉強になるそうです。なかなか時間がとれないかも知れませんが、是非やってみたいですね。

鑑賞コミュニケーター<やまとアート・シャベル>を立ち上げた、大和市のこの先駆的な美術鑑賞教育事業には、多くの自治体が関心を持ってくださっています。この日も西東京市文化振興課の方々が見学に。研修の最後にはシャベラーの皆さんへ「このボランティアに参加してみてどうですか?」との質問がありました。そこでの回答からシャベラーの声をご紹介します。

「色々なボランティアを経験しているが、きちんとした研修で勉強ができて、自主練習の場所も提供していただいて、自分自身の学びにもなり、恵まれていると思う。」
「VTSは初めてで、実際に勉強してみると、想像していたのとはずいぶん違う。でも実際に子どもたちのいる現場に行くのはワクワクする。」
「月2回程度のボランティアといってもお手軽な気持ちで参加していない。指導要領を読まなければいけない宿題のときは大変だった。でも参考文献の資料をもらえば、一生懸命読んでいて、それはメンバーの活動に対する基本的な情報共有、気持ちをシェアすることにとても役立ったと思う。」

皆さん熱心に取り組んでくださっているからこその感想ですね。こうした姿勢を受け止め、皆さんが少しでも活動しやすくなるよう、サポートしていかなければいけないと思います。

 

■10回目 9/18 9:30-15:00@渋谷学習センター

今回は大人向けVTSの映像を鑑賞。ファシリテータのパラフレーズ(言い換え)が大変的確で会話がスムーズに進み、スキルを盗みたくなる充実した内容でした。ファシリテータが作品をよく理解しており、ポイントをおさえ、誘導することなく鑑賞者たちの発言によって内容が深まっていく展開が印象的でした。シャベラーさんの参考にもなったようです。
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さあ!ビデオ鑑賞のあとはVTSコーチング大会です!
これまでまだ一度もファシリテータとしてVTSを経験していないシャベラーさんもいるので、これからの実践に向けてお昼をはさんで午後までVTS漬けです。今回は事前に担当する作品が決まっていたので、予め作品とじっくり向き合い予習する時間をとれたことで、シャベラーさんたちに落ち着きと余裕が生まれたようでした。
場数を踏むことはもちろん大切ですが、鑑賞者もファシリテータも、こうしたコーチングの機会にお互いの良いところだけでなく、改善すべき点もしっかり確認し合って、今後のスキルアップにつなげていきたいですね。
皆様長時間お疲れ様でした!

■11回目 10/9 9:35-12:40@渋谷学習センター

いよいよ12目に迫った事前授業を想定し、再びカードゲームファシリテーションです。
今回は美術出版社発行の『鑑賞教材SCOPE アートポストカード集vol.2』を使用しました。中学生以上用となっていますが、枚数が65枚と多く、作品ジャンルも豊富なので使い方次第でいろいろなゲームをすることができます。子どもたちへのルール説明の仕方や言葉かけなど、コミュケーターとしての楽しい「場づくり」に腐心します。

この日は秋休み中のシャベラーのお子さんたちも参加してくださり、よりリアルな研修に。
うまくいったらみんなで「イェ~イ!」と大いに盛り上がりました。

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シャベラーさんに聞きました!vol.1      
                                                   
4月からシャベラーとなり、VTSを学んできた13名の皆さん。この半年間で何か新しい発見や意識の変化があったでしょうか?
小さな気付きから大きな成長?!まで、シャベラーさんの生の声をご紹介します!
山口由美さんはギャラリー勤務のご経験があり、現在もNPO団体で親子の美術館デビューをサポートするなど、アートを通した活動を長く続けていらっしゃいます。そんな山口さんが体験した「ものすごい変化」とは!?

♪これまでも「対話による鑑賞」というものを自分の活動に取り入れていましたが、この研修で初めて出会ったVTSのやり方はまったく新しい方法でした。「これって作品の題名さえも言わない!え!浮世絵だってことも言わないの?!」というような、最初はすごい戸惑いもありました。でも慣れてくると、これはこれで気持ちいいというか、このほうが正しいんじゃないかと思うようになりました。
VTSは、教えてもらう勉強ではなくて、みんなが平等に意見を言ってどれも正しい。答えがないところで意見を言い合って共感し合うということだと思います。そういうことを続けているうちに「あ、これもありだな」というか、「正解ってないんだな」という意識が強くなって、他の人の意見をすごく素直に聞けるようになりました。それはVTSの場だけでなく、日常的に、たとえば自分の子どもに対してでも、今まで「こうしなさい!」という感じでわりと上からものを言っていたのが、すごく子どもの意見をきけるようになりました。これは本当に素晴らしいことだと思います。ものすごく自分の視点が変わった。なんだか新しい世界を知ったという感じ。誰の意見も「それも正しいね」という見方が、この研修の場だけでなく、ふだんからできるようになったのが自分でも驚きです。自分で人柄も変わったと思うくらい!本当に大きな変化です。
もちろん美術作品に対しても、これまでは作者を見て、時代を見て、マテリアルを見て…という感じだったのが、もっと目の前の感度を上げて行こう、という見方に変わってきたと思います。実生活でも、情報よりも、その場の感度を上げていこうという感じになりました。
小学校での読み聞かせを7年続けているので、学校現場で子どもたちと接することに抵抗はありませんが、VTSのコミュニケータとして活動することは、初めてなので楽しみではありますが、正直やってみないとわかりません。でもいちばん楽しみなのは、私がこれだけ大きな変化を感じているのだから、子どもたちもVTSを経験することによって、きっとすごく変わるだろうなと思うこと。そういう手助けの担い手になり得ると思うと、非常に楽しみであると同時に責任も感じます。でも大きな希望があっていいですね。
この研修では、優秀でやる気のあるメンバーに恵まれて楽しいです。とても勉強になり、とても感謝しています。VTSは自分の生活にも生かされる、それくらいインパクトのあるものだと思うので、いろいろなところで、できるだけたくさんの人たちに体験してもらいたいと思います。(2012.10.09)

(桑原和美)