NPO法人ARDA
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シャベラーさんに聞きました!vol.2

対話で美術鑑賞 2013年01月13日

■シャベラーさんにききました!vol.2                                                         

事前授業でも小学生に大人気の関裕子さん。やわらかい雰囲気で、接する誰をも暖かい気持ちにさせてしまう不思議なオーラの持ち主です。そんな関さんが熱く語ってくれたインタビューをお届けします。

絵の見方がわからない
私は絵が好きなのに、大人になったあるときから、作品の見方がわからなくなってしまいました。たとえば美術館に行っても、見方がわからなくて、具合も悪くなってイライラしてしまう。「ただふつうに見ればいいじゃない」と言われても、私にはふつうに見るとはどういうことかよくわからなかった。美術館に行ったら、知識をつけなきゃとか、キャプションをよく読まなきゃと、思い込んでいました。すると、自分の目でみたいという自分と喧嘩をする。そういう葛藤がストレスになっていました。知らず知らずのうちにそんなものの見方を刷り込まれていたのかもしれません。例えば、私たちと新宿の東郷青児美術館に行った大和市の子どもたちは、家に帰ってなんて聞かれたのかな?と思います。「有名なゴッホの≪ひまわり」見てきた?」と訊かれるのと「どんな風に感じた?」と訊かれるのとでは、ぜんぜん違いますよね。たぶんそういうことがだんだん積み重なっていくと、私のように自分の目で見られない大人になっていくのかもとおもいます。
 また、美術作品を見ることは情操教育として良いと言われるけれど、そういうことではなくて、もっと日常生活に影響が出てくるようなことなのではないかと思っていました。絵を見て「湖がキラキラしてきれい」とか「こんな声が聞こえる」とか、生まれてくる自然な感覚でみることができないのかな?と。ある時、美大受験の予備校に、絵を観ることについて聞きに行きました。すると、「あなたは何にもわかっていないのね。」とけんもほろろ。それ以上何をすればいいかわからなくて、もう絵のことは忘れようと思って過ごしていました。

VTSとの出会い
5年ほどたったある日、このボランティアの募集記事を見つけたんです。「美術知識がなくても大丈夫」と書いてあったので、ここ行ったら話が通じるかもしれないと、シンポジウムに行きました。すぐに「これだ!」と思いました。今まで白黒だった世界がカラーになった感じ!これだ!って。なんとしてもボランティアになりたくて面接に行きました。美大予備校のトラウマがあったので身構えでいったけど、みなさん優しい方々で「あれ?」という感じ(笑)。はじめて言葉の通じる人に出会えたと思ったんです。これまで自分は誰とも言葉が通じないと思っていたのが、私は間違っていなかったんだ!とすごくワクワクしました。VTSは知らなかったけれど、研修に参加して勉強していて、ピンとこなかったことは一度もなくて、いつも「そうそう」という感じでした。私が感じていたことを、理論立てて解説してもらっている感じです。

絵の見方を思い出した自分
今は作品を見るのがすごく楽しい。作品との関係が変わったのと、同時に自分の気持ちが間違っていなかったということがわかったことが大きいです。だから、これからいっぱい作品をみたいなぁと思っています。子どもは本来見方をわかっているはずなので、すぐにできると思うし、大人も気が付いていないだけで、新しい見方を身に付けるというより、思い出すという感覚に近いのではないかと思います。
そして、私自身も変わってきたなと思うことがあるんです。

最近変わってきた自分
VTSを初めて、ふだんの生活での人とのかかわり方、コミュニケーションの取り方が変わってきたような気がします。以前は人とのあいだに線を引いてしまうようなところがあったけれど、相手のことを知ろうと心を開いて会話したり、自然と話す相手に興味を持つことができるようになってきたようです。自分の言葉が通じたという自信から、研修の意見交換の場だけでなく、たとえば友だちと話しているときでも、自分の意見を言うことがあまり恐くなくなりました。今までだったら、トンチンカンかもしれないと思って言わずにいたり、自分と違う意見の人がいると、その人のほうが正しいような気がしてグラグラしてしまっていた。けれど今は、人の意見はこれ、私の意見はこれ、と距離をおいてみることができます。同じような意見でも、共通点と違う部分を客観的に考えられるようになってきました。それから、私はつい自分より人を優先してしまうところがあります。VTSを通して、自分の考えや軸をもって作品ときちんと向き合い、意見をいうことができるようになると、いつでも自分に戻るという感覚を忘れずにいられるようになりました。自分の考えがどっかにいっちゃったり、自分を押し殺してしまうようなことがあっても、ずれた軸を戻すことができるんです。1年前とはぜんぜん違う自分になっている気がします。

これからやってみたいこと
アート作品をきちんと自分の目で見ている人って、意外に少ないのかもしれません。たとえ景気が悪くても、日本にはたくさんの芸術的財産があるのだから、それを見ていない人がいるのはすごくもったいない。今後は、大人向けのVTSも是非やってみたいです。問題を抱えた子どものまま大人になってしまった人もいっぱいいると思うから。そして特に、人のお世話をたくさんしている人たちに、向けて。自分より人のことを考えて生活するのが当たり前になってしまっている人たちに是非やってほしい。ARDAではお年寄りの施設でアートデリバリーの活動などもしていますが、老人施設の入居者ではなく、むしろ家族の人、介護しながら一緒に生活している人とか、そこで働いている人、そういう人たちに向けてやっていきたいです。

VTSが大ブームに!?
実際に自分でやってみて、ここ3年位のうちにVTSブームがやってくる!と思っています。日本全国に広まって、NHKの教育番組でVTS講座をやるくらいになるかも!広がる過程で、ちょっと違ってしまうこともあるかもしれないけれど、まずは浸透すればいいなと思います。美大予備校の先生のように排他的にならないで、ブームになってほしい。そうすれば知名度も上がって、どこでも「ああVTSですね」といって活動しやくなると思うから。そして、もしブームになっても、今のペースでコツコツ続けることを忘れないようにしたい。いろいろなことに惑わされることなく、自分の気に入った絵を観て、しっかり軸を戻して。
今はとにかく<やまとアートシャベル>が大好きで仕方がない!シャベラーさんはもちろん、スタッフも市役所の方も教育委員会の方も、関わっている人みーんな含めて。このメンバーが集まったのは、もうこれは偶然じゃないから!!

(桑原和美)