NPO法人ARDA
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答えの無い問いを考え続ける力

対話で美術鑑賞 2020年05月27日

(以下『Harmony63号(ECCジュニア 生徒保護者向け季刊誌)』特集「対話でつくる美術鑑賞」より、ARDA代表理事 三ツ木紀英コメント部分を抜粋)

 ARDAは社会の中の新しいアートの役割を探求し実験しているNPOです。対話型鑑賞を手がけるようになったのは、2011年の東日本大震災がきっかけでした。震災の3ヶ月後から宮城や福島に入り、子どもたちとアーティストのワークショップを開催する中で、仮設住宅で引きこもってしまう人たちや、原発をめぐる地域の分断や対話のできない複雑な状況も目の当たりにしました。様々な情報を元に自分でみて考え、異なる意見も聴き合い自分なりに判断する力、率直に話し合うコミュニティを、対話型鑑賞で育めるのではないかと考えました。

 VTS*は、答えの無い問いを考え続ける力を育むと言われています。「どこから?」と繰り返し聞くことで、論理的に語る力、語彙力や読解力、コミュニケーション能力も向上していきます。アメリカでは、この授業を年10コマずつ美術館と学校で行うことが想定されています。現在協働している学校では年1回ですが、できるだけ効果が上がるよう、事前にコーディネーターが学校の先生と話し合い、VTSの考え方や対話の仕方を知ってもらいながら、授業に取り入れやすい形を提案するなど工夫をしています。

 昨今の子どもたちは被災地に限らず、自然からも隔絶され、自分の感覚に思いを寄せる時間も失いがちです。主体的に考える力を育みづらい環境に置かれているとも思います。対話を通した美術鑑賞が自分の目で見て深く考えたことを率直に表現しあえるきっかけになることを願っています。

*Visual Thinking Strategies (ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ)
1980年代からニューヨーク近代美術館(MoMA)で研究開発され、学校教育現場を意識して進化させた美術鑑賞法。
よくみて考え、お互いの意見を聴き、自分の気持ちや考えを言葉にすることで、観察力や思考力(論理的思考力や批判的思考力、創造的思考力)、コミュニケーション力などが育つとされる。ARDAはVTSなどの鑑賞法を元にしたアーツ×ダイアローグを行っている。

(出典:『Harmony(ECCジュニア 生徒保護者向け季刊誌)』全文PDF