NPO法人ARDA
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「アーティストとの関わりは私たちに何をもたらすのか」3月15日 主催:国立新美術館

アートワークショップ 2015年05月23日

「高齢者とアート」に関するセミナーに呼ばれました
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今年の2月から4月まで毎月「高齢者とアート」をテーマにした講演依頼があった。「高齢者施設へアートデリバリー」を開始してから、シンポジウムの企画はいつも自作自演、こんなことは初めてだ。高齢化の波が社会全体に急速に押し寄せてきた現実にアート関係者も沈黙してはいられなくなったのだろう。2月のア-トサポートふくおか主催「高齢者とアートのしあわせな出会いを目指して」は前回のブログで報告。その後記録冊子が出版され、熊本現代美術館・学芸員、坂本顕子氏がartscapeに学芸員レポートとして掲載、webをご覧下さい。
アートサポートふくおか http://www.as-fuk.com/koureisya.art.pdf
artscape http://artscape.jp/report/curator/10109251_1634.html

報告:①「アーティストとの関わりは私たちに何をもたらすのか」3月15日 主催:国立新美術館
「アーティストとの関わりは私たちに何をもたらすのか」“経験する”現場からの検証 会場:国立新美術館
このシンポジウムは、2007年国立新美術館の開館以来アーティストによるワークショップを開催してきたことを基に、美術館の教育普及の在り方や地域コミュニティで行われているワークショップ事例も交え、アートが人にもたらす変化や影響を検証して今後に繋げようと企画された。
 基調講演はニューヨークよりホイットニー美術館のヘザー・マクソン氏が招聘され美術館がどんなポリシーで学校、青少年や家族対象プログラムの提供をしているかを話された。ホイットニー氏の近現代美術コレクションを主とするこの美術館は、当然ながら創設者の考え方が色濃く教育普及にも反映されている。10代の感受性の高い子どもたちに現代美術作家と共同作業をし、アートを批判的に議論して創造的に思考する主体性を身につけることをポリシーに教育普及が展開されている。単なるイベントではなく長期的なプログラムとして学校では学べない、もうひとつの学びの場として美術館の存在がしっかりと地域に根付いている。特に、多民族国家として生きるアメリカの子どもたちへ文化の多様性を学び将来の進路を考える機会ともなっている。そんな子どもたちのなかから、弁護士になった子もいるという。アートで自分を見つめ批評精神を学ぶことが社会へ向けて目を開くことになる美術教育の一例だと思う。
 主催者、国立新美術館・学芸課教育普及室の吉澤菜摘氏は開館以来52回、子どもから大人までを対象にしたア-ティストによるワークショップについて事例をパワーポイントを使って発表された。主として展覧会出品者が自作を見せてからワークショップに入り、参加者は自由に制作する。その過程で自分自身の新たな思考や能力を認め、日常のなかで新しい視点をみつける機会となる。アーティストにとっては表現者と鑑賞者の双方に関わり、言葉で伝える経験となり、自作への意欲が刺激され、アーティストの社会的役割を問い直す。スタッフにとっては新しい視点や哲学に触れることができる。参加者の感情が変化していく様子を見て、アートは生きていくことの延長線上にあると確信できる。課題としては評価、検証が不十分/長期的な取り組みができない/限られた人々、限られた層にしか発信できていない/等が話され「アーティストと関わる教育活動の現場から何ができるのか? 何を発信していけばよいのか?。。。との問題が投げかけられた。
 横浜美術館教育普及の端山聡子氏は、昨年、横浜トリエンナーレで実施した中高生のためのヨコトリ教室プログラムについて発表された。2014年5月から10月まで全13回延べ16日の長期プログラムは、逢坂恵理子館長から国際展の話を聴くことから開始。アーティステック・ディレクター森村泰昌氏と一緒に展示前のからっぽの美術館を見学したり、準備中の館内を歩いたり展示後は作品を案内されるという超特別待遇。その後、参加した中高生は「ヨコトリ号こども探検隊」を編成して8月中旬に小学生へ向けてギャラリーツアーとワークショップを実施する。同年齢でない小学生と一緒に作品を観たり作ったりすることは非日常で新鮮な経験ができたという。皆でまとめた記録「船長の航海日誌」には率直で正直な言葉が手書きで印されていて微笑ましい。この企画は森村氏との会議で「子どもたちにお子さまランチではなくフルコースの体験を!子どもたちだけの世界を!」という発言から始まった。館でも初の取り組みで「学ぶ」から「伝える」、「享受」から「伝達」へ、「消費から「生産」への発見と見守る美術館という経験であった。子どもたちへの種まきがどう開花するか楽しみだ。
 4番目の事例発表「アーティストが高齢者施設へでかける時」と題して、私は2月に行った福岡の時とほぼ同じ内容をDVDを使って話した。福岡では持ち時間は50分で主に福祉関係者対象向けであったが、ここでは25分で美術関係者へ。
 このフォーラムは1部と2部に分けて美術検定ブログに掲載されたので詳細は下記ブログをご覧下さい。
http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-185.html
http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-186.html

NACT_03152015_9 さて、定員200人をオーバーし、大盛況だったこのシンポジウムが残した意義は? 冒頭の主催者からの疑問詞への答えは?
私の率直な感想はヘザー・マクソン氏の話の中に沢山のヒントがあると思った。
日本の美術館は美術館へ足を運ぶファンに留まりがちで、主として入場者数で評価するのが定番となっているようで広がりに欠ける。ホイットニー美術館は社会の中での存在意義が明確にある。美術館を超えて、美術でなくては出来ない人間教育を本気でやっていること、社会的に手が届かない所へ手を差しのべていること、美術で批評精神を養い社会の一員としての生き方を育てる、等、NPO的な活動を美術館が行っている。日本の美術館にはNPOと連携して美術を必要としている人々への企画開発を望みたい。そして、私にとっては高齢者施設でのワークショップは公に開かれていないので、このような機会をいただいたことに深く感謝している。また、事前打ち合わせと見学を兼ねてヘザーさんと企画担当者ご一行で3331ア-ト千代田を訪れて、ARDAスタッフから各活動について説明と意見交換できたことを記しておきたい。
「パネルディスカッション」写真提供:国立新美術館

IMG_2141ヘザーさんと“ハイ!チーズ!”