NPO法人ARDA
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いよいよオープン!鳥取県立美術館 鑑賞講座の講師に行ってきました

対話で美術鑑賞 2025年09月16日

今年いよいよオープンした鳥取県立美術館!新しい美術館には毎年県内すべての小学校、110校の4年生が美術館にやってきます。ARDAでは2022年に教育委員会向けの講座、2023年から市民ボランティア向けのファシリテーター養成講座の講師でお手伝いをしてきました。

5月GW明けからはじまった学校連携では、6月20日時点ですでに32校もの学校がやってきたそう!つまり平均して毎週5校がやってきて、三人の教育普及担当学芸員とボランティアたちで対話型鑑賞を行っているのです。それはもう大変な業務なのですが、プログラムは子供たちには大好評!楽しかったからと子供が家族を連れて美術館にやってきて、展示室で親に「何が起こっていると思う?」とファシリテーター役になりきって、お話をしている姿も見られるそう。


写真は展望テラスにある中ハシ克シゲ作品の《抱きつき犬》。犬の両手の間に足を差し込んで立つ。犬の頭を触ると、帰宅して愛犬に抱きつかれたときの感覚を思い出す!目を閉じて触覚だけでつくった彫刻なのだそう。

今年は、市民ボランティア「ティーモアさん」に向けた5時間の講座に加えて、近郊の鳥取県立短期大学の1年生に向けた2時間の講座も実施。対話鑑賞は恥ずかしそうな学生でしたが、ファシリテーションになると本領を発揮していました。

ティーモアさん向け研修には、教育委員会の方や近郊の先生方が大勢参加しているのが印象的でした。対話型鑑賞のデモンストレーションでは、実物の作品を鑑賞したので参加者の言葉がビビッとで深かった。舟越桂の《緑のスフィンクス》では「この人物には母が私に向けたような慈愛にみちた愛を感じる」や、深澤幸雄の《魅惑的な影》では「人間の形をしている実体よりも、影という移ろう存在こそ人間の本質なのではないか」といった意見がきかれ、人とはどのような存在なのか、一人一人の価値観が表れる対話に。 終了後も、先生方から熱心に質問をうけ「とにかく楽しかった」「ここ数年の研修の中で一番面白かった」「5時間があっという間だった」と前のめりで、すべて吸収しようという意欲が感じられました。

2021年の研修レポートはこちら→
https://totto-ri.net/report_arda_vts20220326-1/
https://totto-ri.net/report_arda_vts20220326-2/

県内の全小学校が来館し、対話鑑賞をすると決めた美術館の方針の元、担当として動いていたのは佐藤真菜学芸員。毎年1回鳥取にいく度に、佐藤さんから、市民への向き合い方の一旦を伺っていました。

教育委員会や学校の先生たちへの地道に働きかけ、作品をもって学校に行き、対話鑑賞の授業を続けていたことで、開館前から中学校では朝鑑賞が広がっています。また、講座では美術館の中央に位置取る「ひろま」と呼ばれる大きなスペースでファシリテーション練習をしていると、「これをやることにどんな意味があるの?」と根本的であるが故に答えにくい質問をしてくる男性に対しても、佐藤さんが時間をかけて説明をしていました。そのような先生はもちろん、市民一人一人に向き合った対応が、美術館をアート好きの人だけのものでなく、学びやコミュニケーションやケアに開いた関わりしろをつくっているように思います。

朝鑑賞のシンポジウムの様子。
https://tottori-moa.jp/event-report/16989/

これからも鳥取県立美術館の活動を応援し、注目していきたいと思います。(三ツ木)