港区ふれあいアート 中津川浩章さんWS「みんなで物語を連想しながら大きな絵を描いてみよう」
2025年10月、港区の保育園にて美術家/アートディレクターの中津川浩章(なかつがわ ひろあき)さんによるワークショップを行いました。今回参加したのは、5歳児6名の子どもたちです。
会場となる園児室には3メートル四方の大きな画用紙が準備され、いつもとは違った室内の雰囲気に少し緊張気味の子どもたちと共にワークショップはスタートしました。
まず初めに、中津川さんから子どもたちへ、今日の大切な約束が伝えられます。
「今日は自分が描いた絵の上に他のお友達が絵を描くかもしれないけど、怒ったり、泣いたりしないよ。自分も他のお友達が描いた絵の上に重ねて描いていいんだよ。」
今日は一つの大きな画用紙にみんなで一緒に描いていきます。赤、青、黄色、緑、オレンジ、白など、色とりどりの絵の具の中から一人一色、順番に好きな色を選んだら準備万端です。
「まずは、ながーい線を描いてみよう。」
中津川さんの声がけで、子どもたちは思い思いの線を描き始めます。恐る恐る慎重に描く子がいれば、ハケで大胆に力強い線を走らせる子も。描いていく線には、それぞれの個性がにじみ出ているようです。その後も中津川さんの声がけに合わせて、子どもたちは様々な形を描いていきます。
気がつけば手や足は絵の具まみれに。最初は汚れを気にしていた子もいつの間にか画用紙上を縦横無尽に動き回り、夢中で筆を動かしています。大きな画用紙は、たちまち色とりどりの線でいっぱいになりました。
「〇〇ちゃんの線の上に描いてみようかな!」
「ここ、色が混ざって、茶色になってる!」
「こっちは紫だよ!」
何色もの色が重なり、混ざり合い、新しい色が生まれる。その発見を嬉しそうに伝え合う姿があちこちでみられました。

「さて、次は絵の具の雨を降らせるよ!」と中津川さん。
ポタポタ、ポタポタ、ポタポタ……。緑色の雨、黄色の雨、赤色の雨。
普段はできない大胆な絵の具の使い方に、子どもたちは大興奮です。緑の雨と赤の雨が降れば、まるでクリスマスのように、白色が増えれば雪景色のように。画用紙の景色はどんどん姿を変えていきます。
「次は、好きな動物を描いてみよう!」
大きな猫、小さなクマ、ライオンなど、今までよりも濃い絵の具で描くことで、くっきりと形が見えてきます。他の子が描いた猫の耳に色を塗ったり、鼻を描いたりと誰かの絵に付け足して描く子が現れたり、電車を描いていた男の子たちが2人で協力して長い線路を描き始めたりと、あちこちで自然と共同作業が起こりました。この時、いつもは乗り物を描きたがらない女の子が、自ら進んで乗り物を描いている姿に担任先生は驚いたそうです。場の雰囲気に背中を押され、だんだんと心が解けたことで、普段は苦手なことにもすんなりと挑戦できたのかもしれません。

ワークショップ終盤になると、画用紙はたくさんの絵の具が重なりヌルヌルに。子どもたちは滑って転ばないように気をつけながらも、スケートのように滑ること自体を楽しんでいる様子です。手のひらや足の裏に直接絵の具を塗り、その感触を楽しむ子も出てきました。冷んやりとヌルヌルした感触を楽しむ姿は、まるで泥あそびのようです。絵の具まみれの手足に足裏のヌルヌルの感、普段味わえない感触を今日は思いっきり楽しみ尽くします。

そして、ワークショップはあっという間に終わりの時間に。出来上がった大きな絵は、木々が生い茂る森のようにも壮大な宇宙のようにも見えてきます。子どもたちからは、「楽しかった!」という声がたくさん聞こえてきました。
終了後、中津川さんは、「身体の中のリズムでまるで踊るように描く様子が印象的で、子どもたちの姿が自然と音楽を感じさせてくれました。」と話してくださいました。
画用紙から思いっきりはみ出し、身体を目一杯に使って大きな一つの絵を描くという、普段の生活では味わえない特別な絵画体験となりました。(根本)

中津川 浩章(なかつがわ ひろあき)ウェブサイト
線描を主体とした大画面の絵画作品を国内外で発表。障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会のキュレ―ション、ワークショップ、福祉作業所運営などを行う。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもなどを対象にアートWSや講演活動を全国で行っている。



