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やまとアートシャベル 1期生デビュー!<実践編>

対話で美術鑑賞 2013年01月13日

■11/29 8:20-16:20@大和市立渋谷小学校

いよいよ初めての学校現場にデビューです!
予定よりだいぶ早い時間にシャベラーさんたちが続々と集合。やや緊張の面持ちながら、事前準備にぬかりのないシャベラーさんたちの意気込みを感じます。1時間目にアート・カードを使ったグループワーク、2時間目にはプロジェクターの映像を使った対話による鑑賞(VTS)を行います。次週の美術館訪問をふまえ、アートカードやVTS作品にも実際に鑑賞する作品を取り入れた、美術館訪問の一環としての事前授業です。2時間セットの授業を5年生の3クラスそれぞれに実施するため、1時限目から6時限まで、丸一日の長丁場!これまでカードゲームの進め方や対話の工夫など試行錯誤を繰り返し、練習してきたシャベラーさん!子どもたちの待ち構える教室に入る時はドキドキしたけれど、コーディネータの三ツ木の紹介でひとりずつ自己紹介をする姿は落ち着いていました。
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さて、グループに分かれてカードゲーム開始!
活発な意見がどんどん飛び出し、シャベラーさんと一緒になってノリノリの班もあれば、なかなか意見がでない子どもにじっくりと向き合うシャベラーさんも。それぞれの個性と個性が溶け合い、アートを通したユニークなコミュニケーションが各班で繰り広げられます。最初の対話による鑑賞はクラス全員で視聴覚室に場所を移し、プロジェクターに映し出された作品をみながらクラス全員でVTSを三ツ木のファシリテートで行いました。カードゲームですっかり打ち解けた子どもたちからは予想以上に手が挙がり、意見が途切れることなく進みました。
その後、2組での少人数VTSでは、シャベラーさん2人が見事にファシリテータデビューを果たしました。授業が終了してまだ興奮冷めやらぬシャベラーさんたちからは、すぐに次に向けての改善点が次々に挙げられ、ますます前向きに、そして確かな自信を得た皆さんの頼もしい姿が印象的でした。
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そして、当日見学にいらした教育委員会の方からいただいた感想は、アートシャベルを大いに励ますものでした。
「教師以外のいろいろな人がかかわることで、子ども達がのびのびとできる。そのなかで、自分の違う面を子ども達自身が気いたこともあったのではないかと思う。子ども達が2時間これだけ集中していることにまず驚いた。どんな発言でも暖かく受け入れてくれるコミュニケーターの存在は自信を持たせてくれるし、友達のいいところを発見することで、他者理解にもつながる。カードゲームのときなど、慣れてくるに従って子ども達の顔がだんだん近づいていく姿が印象的だった。」

 

■1/22 8:15-16:30@大和市立草柳小学校 学校内完結型授業

今年度実施のモデル校2つめの草柳小学校では、美術館見学は行わず、学校内でのカードゲームと電子黒板を使ったVTSのみの学校内完結型の鑑賞授業を行いました。
授業後の振り返りでは、来年度以降全小学校に広がっていくこの活動を、より充実した、そしてより学校現場に即した内容にしていくために、先生方を交え様々な意見交換がなされました。
どんな活動でも積極的に参加してくれる子どもたちばかりではありません。とても良い意見を持っているのに頑として口を閉ざす子、すぐに飽きてしまう子、友だちの受け狙いでふざけた発言をする子…。そうした言動にどう対応し、子どもたちの声をどうやってすくいとっていくかは常に意識すべき課題です。また、通常一回45分授業のなかで導入部から最後のまとめまで、教えるべき内容をきっちり伝えながら子どもたちの気持ちをひっぱっていく先生方からすると、2時間かけてアートに慣れ、ゲームをし、結論も出さないというやり方は、やや冗長に映り、戸惑いもあるかもしれません。VTSでは情報を提供したり、発言を誘導するようなファシリテートは基本的に行いません。正解がないからこそ、発見したことや考えたことを自由に発言し、同時に他者の意見を聞きくなかで、作品の様々な視点や見方を感じ取っていきます。しかし限りある図工の授業時間数内で行っていくうえで、活動の流れや時間配分、ファシリテートのあり方や評価への対応など、まだまだ検討、工夫を重ねていくべき課題はたくさんあります。これからも現場の先生をはじめ様々な立場の方と話し合い、試行錯誤しながら、美術鑑賞を通したこれまでにない学びの場を提供していきたいですね。
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<草柳小のみんなからのお手紙>
草柳小学校の子どもたちから、シャベラーさん宛てにお礼のお手紙が届きました!
「楽しかった!」「また来てね!」というたくさんの嬉しい言葉だけでなく、びっくりするような感想も見られます。
そんな珠玉の言葉の一部をご紹介しましょう。

「…最後にみんなで一つの絵を見るときは、自分もいけんを言えたし、他の人のいけんもきいて、そして自分でその絵を見て比べたりできたので、楽しかったです。…図工が今まで以上に好きになれました。なので、今やっているちょうこくとうの授業をもっとがんばろうと思いました。」

「…3組でやったゲームはいっぱい発言できたし、時間を忘れるくらい(作品)一枚だけで、はなしあえておもしろかったです。」

「私はゲームも面白くてかんしょうも楽しかったので、六年生でもこういうイベントがあったらいいなと思いました。…二枚目の絵は時間がなかったので、よくわかりませんでしたが、果てしなく続いていたので、人の道を表しているのかと思いました。」

「私は図工のいい所は答えがない事です。それで友達のも聞いて、きょう感できる事もありました。また『そういう考えがあったんだ』と思うときもありました。いままでで、五年生が一番「意味のある図工をやっているな」と改めて思いました。私がいうのも変なんですが、この勉強は今の四年生にも必要だと感じました。何でかと言うと、静かにけじめをつけていると思うからこそ、ストレスはたまっていると思います。とくに女子はあまり言わなそうだから、必要だと思いました。」

「私は授業で絵がすばらしい事を知りました。一つは『絵はどんな事でも正解、不正解がない』という事です。なので、私はカードゲームの時やみんなで絵を見たときに『面白いなぁ』『キレイだなぁ』と考えて、おもわずうっとりしてしまいました。二つ目は全ての線がちがうという事です。それは絵がすべて似ていてはつまらないのですが、カードゲームをやった時に全てのカードがみんなちがったような感じの物だったので、カードをつなげていく事ができたんじゃないかなぁと思います。この授業で絵が本当にすごい物なんだという事を改めて感じました。」

子どもたちの言葉は様々なことを示唆してくれるように思います。すばらしい!

 

■1/31 8:15-14:30@大和市立引地台小学校 事前授業

一週間後の横浜美術館見学を控え、引地台小学校の5年生57名に向けてカードゲームとVTSによる事前授業を行いました。
5年生にもなると、意見があっても手を挙げない子がでてきます。前モデル校でてきたこの問題について、早速講師から対策が!
ジャーン!それは必殺<なんでもシート>です。
鑑賞の最初、静かに作品を観るときに、このシートに発見したこと、考えたことをメモするようにしました。もしも、手があがらなくても、カードに書いてあることを発言するようにファシリテーターが促したり、カードゲームで子どもとやりとりしたシャベラーさんがVTSの際にも傍でメモをちょっと覗いて、発表するように促すことができます。やってみると、素晴らしい意見が出て発展していく場面もありました。そして、「聞く」姿勢がしっかりとできる子どもたちは、作品を前にして子どもたち同士で議論するなど、大人のVTSかと驚くほど、充実した対話による鑑賞を展開しました。
この引地台小学校では数年前から学校で取り組んでいる国語科の「物語の読解の研究」のなかで、「意見を書き、発表し、根拠を述べる」という練習をしてきたことの積み重ねが、大いに生かされたようでした。振り返りでは、「いつも勉強を苦手にしている子どもたちが、生き生きと活躍している姿が嬉しかった。」という校長先生の言葉が印象的でした。横浜美術館の岡崎さんも駆けつけてくださり、いよいよ美術館見学が楽しみになってきました!
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